13章 仲直り 003

「……あっ!」
 進路を決めるにあたり、ルイザは唐突に大声を出す。
「な、何?」
 びくりと驚いたラムアが問う。
「そう! 大事なことを忘れていたよ! ティア……えっとロナちゃんは!?」
 複雑な顔になってティアは答える。
「……拐われた」
「嘘ぉ!?」
「ロナちゃん? えっと……王女様のこと?」
 ラムアは、ロナに会ったことが無い。
「そーだよー。ボク達は、ロナおねぇちゃんを助けに行くの」
「いっぱい訊くことがあったんだけど……居場所は?」
「わから」
「ボク知ってるよ!」
 ティアの言葉を遮るようにして、えっへんと胸を張ってルゥは言った。
「何処?」
 あっち、と勢いよく指したのは北。
「……」
 しばらくの沈黙の後、ルイザはティアに向き直って言う。
「まぁティアでもいいけど……一座を襲ったのは誰? 知ってるよね?」
 ティアは顔を背ける。
「……」
 あー今ボクのこと無視したでしょう、とか何とか、ルゥの非難の声が遠くで聴こえた。
 あれは自分の失態なのだ。
 自分を見失ったティアのせいで王女は――
「あのねー、ボク達が外に出た時には火が回っていたんだ。斬りかかって来た人は二人だったけど」
 黙り込んでしまったティアの代わりにルゥが答える。
「みんな似たような背格好をしていたよ」
「顔を隠していたよね?」
「うん」
「やっぱり見てないか……」
 溜め息をついて、落胆したように肩を竦(すく)める。
「でも、ロナおねぇちゃんは犯人と一緒にいるよ?」
「え、ホント……!?」
「うん! あと、ござるちゃんも」
 ルゥがにこにことそう言ったら、ルイザが抱きついた。
「ルゥは場所分かるんだよね?」
 ルイザの腕の中でこくりと頷く。
「いー子いー子」
 わしやわしゃと髪をくちゃくちゃに撫でてやる。
「わぁ」
 きゃはきゃはとルゥは喜ぶ。
 ティアもラムアも何も言わなかった。

 兄さん。……否、お兄ちゃん。
 待ってて。
 僕はお兄ちゃんに追いついてみせるよ。
 必ず。

あとがき

2011年06月09日
改訂。
2005年11月22日
初筆。

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