36章 二色 002
ロナが、サーファと共に城に侵入した際、兵士達に見つかり、止む終えなく戦いになったが、たくさんの人が傷つくことに耐え切れなくなったロナは、身分を明かし、サーファだけを逃した。
その際に、彼を庇って弓矢を腹部に受けた。
そこに居合わせたのか。
「……どういうこと!?」
「死にかけのアナタをへの攻撃を止めさせ、この部屋に運んでアゲタノヨ?」
「! どういうこと……」
この目の前にいるラグと名乗る子供は、一体何者なのだろう。
見た目は十歳くらいの子供だが、話し方や性格など、その容姿には全くそぐわない。
しかも、城に入れるだけでなく、兵への攻撃も止めさせられる程の権力を持っている。
「あなたは、何者なの」
ロナは、もう一度問う。
「ウフフ、……何者だと思う?」
それが分かっていれば、質問しない。
予想はしていたが、簡単に答えは得られそうに無い。
「貴族、には見えないわね」
「ウフ、そうね」
「軍人にも見えないわ」
こんな子供が軍にいるだなんて聞いたことが無い。
……否、城内外の人脈や噂話に疎いロナの知識は、役に立つはずが無く、それが本当かどうかも判断がつかない。
「どうカシラ?」
子供は曖昧に答える。
「……」
「もうギブアップ? ほんっと、ツマラナイわね」
「学者、女官、お針子、医務員、商人……」
本当に浅い知識しか無いロナは思いつくままに肩書きを述べたが、どれもしっくりくるものは無く、きちんと勉強していなかったことを後悔する。
軍のトップである、サーファ・スティアスなら分かっただろうか。
「アハ、全部ハズレ。おバカな王女様?」
子供は嘲笑うかのようにそう言い、ロナの頬は怒りの為、朱に染まる。
「……あなたは、何」
声音を落として再び問うた。
「過去の遺産」
にっと笑う口には濃い色の紅が塗られていた。
「は?」
理解出来ずに問い返す。
「コレ以上は言えないワ」
「どうして」
「アナタが、アタシの敵か味方か分からないカラ」
「……?」
その時、扉の開く音がして、駆け足に女が入ってくる。
「ご無礼を失礼致します、殿下」
それはロナを介抱してくれた女で、少し安心する。
「貴女!」
女は、強い口調で子供に話し掛ける。
「ナァニ?」
「どうしてここにいるのですか!?」
「イチャ悪い?」
この子供は、誰に対してもこうふざけた口調で喋るのか。
「ええ、殿下には絶対安静が必要です」
「ソウ?」
「そうです」
「でも、主サマの許可は得ているワヨ?」
「……っ」
女は少し口を閉ざし、考える。
「まっいいワ」
女は子供に視線を戻すと、子供は踵を返し、ロナに背中を向ける。
「マタ会いましょう? 異端の王女様」
「また……?」
「ソウ、また会うわ」
それ以上は何も言わない。
代わりに、女が問いただす。
「何処に行くんですか」
「アタシの行動は制限されていないはずヨン?」
「……」
女は黙る。客観的に見て、子供の方が地位が高いように感じる。
「主サマはいつもの場所カシラ?」
「……ええ」
「そっ。……じゃあね」
ひらひらと手を振りながら、子供は、ゆっくりとした足取りで女の横を通り過ぎ、そのまま退室する。
あとがき
- 2013年06月28日
- 初筆。
口調……難しい。