異なる者 59章〜言霊の巫女〜




「なっ……!」
 辺りには奇妙な村の村人達が、納屋を取り囲むように集まっていた。
「カルゲニ ガラレワ エニケイ!」
 強い声で叱咤される。
 と同時に、ぱあんと、どこかで何かが弾けた。まるで曇っていたガラスが急に晴れるかのように。
「冗談じゃないわ。誰が生け贄ですって!?」
 ラムアのその言葉に、ルイザもルゥもぎょっとする。
「生け贄…?」
「私たちを逃がさないって」
 ラムアはからかっているのではない。
「いつの間にあの人たちの言葉がわかるようになったんだい?」
「……え?」
「さっきまで通じなかっただろう?」
「……そういえば…」
 三人は顔を見合わせる。
 そして口の端を吊り上げる。
「好機を逃がすのは得策じゃないね」
「ええ」
 背中に、好きな人の体温があるというのは、人をこんなにも安心させるものなのか。
「ハチタシタワ ノンナ エニケイ?」
 ラムアが冷静に問うた。
「…! ハツヤア ンジンバヤ ケノイナャジ?」
「ハズハナンソ イナ」
「ハバトコノア モニレワレワ ゾルカワ?」
 どうやら困惑したような会話が聴こえてくる。
「ね、アリアス語との違いは?」
「えっと…逆?」
「逆?」
 ルイザもルゥも問う。
「例えば…お城なら、ロシオ。銀髪ならツパンギ」
 意外と簡単よ、とラムアは笑う。ルイザもルゥも感嘆の声を上げた。
 だが視線は村人達から外さない。
 彼らの中で話がまとまったようで、代表者が一人、前に進み出る。
「ハタナア デノモニナ?」
「ハシタワ アムラ。ハニココ ケダタッヨチタ。テイツニエニケイ テシナハ。ガシタワ ニラカチ イナレシモカルレナ」
 ずり落ちそうになっていたティアの身体をルイザが支える。
 そういえば、ここの人たちは皆、黒髪黒目のようだ。
 そんな中、ラムアとルゥの容姿がよく目立つ。
「……シドアの……」
 ルイザがふいに口にする。
「シドア?」
「うん。…ティアみたいに黒髪黒目の人達」
 ルイザの黒い瞳が、切なく伏せられる。だから、ルゥは何も言えなくなってしまった。
「ガタナア ノレワレワ ヲラム テックス?」
「ハリギカルキデ」
 その言葉を聴いて、歓喜の声が上がる。
 もしかすると、黒い村に、金色の天使が降りてきたように感じたのかもしれない。
 そして代表者が、事の発端から語り始めた。





2006.1.26



*あとがき*
ティアが主人公ですよ。一応。







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