17章 閉ざされた村の秘密 004

「で、どうするのリーダー?」
 ラムアはルイザに視線を移す。
「っていうと……?」
 ラムアは手短に、村人から聞き出した話をする。
「僕は、リーダーになったつもりは無いけど、……でも、ティアは寝てるし、……それに魔術のことだしね」
 ここは納屋で、今三人は円になって向かい合い、今後の相談をしている。勿論ティアの頭はラムアの膝の上だ。
「ししょー……あの人たちを助けてあげよ」
 ルゥが不安に潤んだ瞳を向ける。
「ルゥ……」
 肩まで金の髪をそっと撫でつける。
「そうだラムアちゃんも気分が悪かったり、変な高揚感みたいなのは無い?」
「んー……特には。でも、いつもより、頭が冴えてるかな。急に言葉が分かるようになったし……」
「何かしら影響はあるって訳だ。ルゥは?」
「ボクは……心臓が、少しドキドキする……だけ……」
 何だかいつもより脈が早い気がするし、紫の瞳も潤んでいる気がする。
「二人共、大丈夫だよ。寝ている間に何があったのか分からないけど、こんなにも急激に、魔力が強まったからね。相応の反応だよ。心配することは無い」
 安心させるように軽く微笑む。
「さて、方針は決まりだ」
「解決策はあるの?」
 ルゥもラムアも、期待に満ちた目を向ける。
「まだ何とも言えないけど 、アレが人為的に造られたものならば、ある法則がある。今からそれについて話すよ」
 二人がこくりと頷くのを見届けてから、ルイザは説明をし始めた。

 あんなに強力な力を持つものがあれば、当然自然のバランスが崩れる。なのに、あれはその歪んだ状態で存在し続けてている。
 つまり、逆に考えると、そのバランスを整えてやれば、それは存在することが出来なくなるということだ。
 そのバランスを整えるのに有効なのが、あの強大な力を分散させることだ。具体的には、三つの点で結ばれる時に一番安定するだろう。
 だから、まずはその場所を探さなければならない。
 全てはそれからだ。
「しかし困ったことに、僕らはこの村に閉じ込められている。この村にいる限り、死術に対処する術は無いだろう」
「じゃあどうすれば……」
「とりあえず、彼らを説得しないと出して貰えそうに無いよね」
「それはあたしが」
「否……普通に話しても、彼らは納得しないだろう」
 ルイザは、暫く考えてから答えを出す。
「うん……もしかすると、魔術的な約束の方がいいかもしれない。彼らは魔法的な束縛について身をもって理解している。だから当然、僕らもそれに縛りつけられることを要求するだろう」
「ボクたちが……逃げるってこと……?」
「そうだね。きっとそう思われるだろうね。この計画を進めるには、まずは彼らの信頼を得なくてはダメだ。その点彼らは魔術に、絶対の信用を置いている」
 そこでだ、とルイザは二人の顔を引き寄せて耳打ちする。
「そんなの……あたしに出来る……?」
 確信はあった。
 彼が彼女を助けてくれるという、確信が――
「出来なければ言わないよ」
 ルイザの黒い瞳はどこを見ているのだろう。
 何だかずっと遠いところを見ている気がして、時々不安になる。
「そう……ね。あたしも何かしないとね」
 ちらりとティアを見てから決断する。
「あたしが彼らと契約する」
 でないとここから出してもらえそうにないし、生け贄として捧げられてしまいそうである。
 何(ど)の道、彼らを助けてやるつもりなのだし。
「良かった」
 君が引き受けてくれないと、多分あの人の助けは無いから。
 そしてあの人の助けがなければ、これはきっと解決出来ない。
「ありがとう」
 ルイザはにっこりと笑う。
 これは好機に違いないのだ。
 こんなチャンスを逃してはならない。
「でも、こんな親切心の塊のようなこと、絶対ティアには内緒だからね」
 唇に人指し指を押し当ててくすくす笑う。
「ティアは素直じゃないから……ね?」
 そう言い終えてから、ルイザはラムアに契約の仕方を教え始めた。

あとがき

2011年06月24日
改訂。
概念の話ってとても難しい。
2006年01月29日
初筆。
ルイザが見ているのは、いつも兄の背中。

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