異なる者 53章〜二つのキセキ〜




「っーかさーティア?」
 腕を組んで厳しい顔付きでルイザが言う。
「ルゥは北って言っていただろう?」
「ああ」
「僕達が離れてから、北に進めてないよ?」
「……は?」
「どういう意味?」
 やっぱり気付いてないか、と溜め息をついて言う。
「大分西にズレてる」
「僕達はこんなところを通ってないしね」
 ルゥを振り返る。
 右手で剣を掴み、しゃがんで左手で、土を掴んでいた。
「どうかしたルゥ?」
「何か……ここよくない」
 どうやら土を調べているらしい。
「そうだね」
 師匠もそう言う。
 きりきりと頭が痛んだ。
 何が悪いのかなんて見当もつかないが、でもここは嫌だった。
「よくないって…何が?」
 ラムアの声が森に響く。
「たまにあるんだよね」
「何が」
 ティアにはわからない。
 ただ少し気が重い。
「自然に魔力が働く場所が」
 ルイザはこともなげに微笑んだ。
「だからね、魔力に適性が皆無の…否、反発すらあるティアは、魔力の圧に耐えられなくなった」
「だが、今は何とも…」
「そりゃそうじゃん。僕が圧を取り除いてあげたからね」
「へ、へぇ、あれってそんな魔法だったのね」
「だからルゥも心配することない……」
 そう言って視線を落とす。
「ししょー……」
 紅い石の嵌った銀の磨剣がガタガタと震えていた。
 ルゥが落ち着けようとしっかりとそれを抱く。
「その剣は……?」
「摩剣だ」
 ティアが短く答える。
「摩剣…イチゴショート。持ち主がいなくなったから、俺が預かっていたが、そいつがそれを気に入ったから、あげた」
「紅の貴石きせきに銀の軌跡きせき。二つの奇跡をはらんだ摩剣……イチゴショート……?」
 口から滑り出る言葉は、古くからの言い伝えである。
 ルイザはルゥの隣にしゃがんで、その細くて白い指で紅い貴石を撫でる。
「二つのキセキは、新たな奇跡を呼ぶ」
 そっと言葉を続けた。
「スゴい。やっぱり僕が見込んだ通りだったんだね。きっとこの剣はルゥに使われるために、ここにある」
 彼女は微笑む。
「ボクに使われるため……?」
 もう一方の手でルゥの頭を撫でてやる。
「そうだよ。剣の一本一本に、適した使い手がある。魔法の属性と同じようにね。ねぇ、ティア?」
「ああ」
「じゃあ…どうして震えているの…?」
「使い手にはわかるはずだよ。……まぁ、今回は、この森の発する魔力と剣の持つ魔力が反発しあってるってことだね。暫くしたら治まるよ」
 彼女は手を離して、立ち上がる。
 ルゥは名残惜しそうにルイザを見上げた。
「みんな、今日はもう休もう」
 ちりと緑と黒の視線が交わる。
 まだ日は高かったけれど、ルイザの言葉に従うことにした。





2005.12.31



*あとがき*
二つのキセキは、咄嗟の思いつきながらいいと思う。
色々話に絡めそう。






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