23章 休息 002
仕方なくルイザが勝手に買った衣装に腕を通す。
「もう、勝手なんだから」
ホントはもっと大人っぽくてセクシーなのが良かったのに。こんな子供っぽいのなんて。
「それにしてもティアはどこに行っちゃったのかしら……?」
ティアに選んで貰いたかったのに、肝心のティアはいつの間にかいなくなっていた。
「あたしを置いていくなんて、テイアの馬鹿!」
そんな独り言を聴くものはいない。
「どこかに行くなら、教えてくれればいいのに」
ラムアは悪態をつきながら、停留所の傍の小屋で着替えを始める。
着ていた服を殆ど脱ぎ終えた時、外から控えめな声がして、驚いた。
「ラムア様」
「え、ティア?」
「はい、今お時間は宜しいでしょうか?」
「ええ、うん、いいわ」
勝手にいなくなったことに対して小言を言おうと思って、自分の姿を見る。下着の上に薄いドレスのようなものを着ているだけだったが、ティアだし、まぁいいだろう。
「入って」
ティアは、一礼をしてからその小屋に入る。そして顔を上げた瞬間、驚いたように目を見開く。
「ラ、ラムア様!?」
「ん? なぁに?」
ラムアは気にした風もなく、ティアに近付く。だがティアは顔を背けて、後ろに後退(じさ)る。
「今までどこに行っていたの?」
ラムアはティアの様子を目にも留めず、尋問をする。
「えと、あの」
昔からそうだったが、彼女は自分の格好に無頓着過ぎる。目のやり場に困ったティアはぎゅっと目を閉じる。
「……め……です」
そして、喉の奥から搾り出すようにそれだけを言う。
一瞬だったが、彼女の身体のラインは昔と違って、丸みを帯びていた。
「立派な淑女は、男に肌を見せてはいけません」
勢いに任せて、そう断言する。
「平気よ」
少し驚いたようにティアを見つめる。
「ダメです」
もう一度言う。
「もうっ、これくらい平気なのに」
ラムアは仕方なく、先ほど脱ぎ捨てた服を一枚羽織る。
「着たわ」
ティアが恐る恐る目を開ける。
少しだけ困った顔をしたが、ティアはもう目を閉じたりしなかった。
だから言う。
「ねぇ、さっきはどこに行っていたの?」
「あの……」
ティアは、躊躇いがちに左手を差し出す。
そこには花の形をしたガラスの髪飾りが握られていた。
「少し先の店で、これを見つけたのですが、ラムア様の瞳の色によく似合うのではないかと思って」
「え……」
まさかそんな答えが返ってくるなんて思ってもみなかったラムアは、驚いてその髪飾りを眺めた。
それは先程ルィザが選んでくれた服のビーズの色にもそっくりだった。
「くれるの……?」
「はい」
照れたように頷く。
嬉しくって思わず涙が零れそうになったが、どうにか堪えて微笑む。
「ありがとう」
ラムアは、それを受け取って髪につける。
「どう?」
「よく、お似合いです」
その言葉を満足そうに聴いていた。
あとがき
- 2011年07月14日
- 改訂。
ラブラブ。 - 2006年00月00日
- 初筆。